共通仕様/75年式/76〜77年式
74年に発売された860GT(E)は、特に欧州のジャーナリスト等から最低の評価を受けるとともに、熱狂的なドゥカティスト達は750ccモデルのスタイルが失われたことに落胆した。
欧州市場における「壊滅的なセールス」を受けて、75年にドゥカティ社は特に欧州市場に向けて、860GT(E)のジウジアーロ・スタイルからデザインを変更した860GTSを発表した。
860GTSは、860GT(E)のデザインが先鋭的過ぎたために欧州市場に受け入れられなかったことに対する、ドゥカティ社の回答であった。
しかし、860GTSは860GT(E)のイメージが強かったためか、あまりヒットしたモデルであるとは言えず、860GT(E)の販売不振を僅かにカバーしたに留まった。
860GTSの総製造台数は、1538台である。
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共通仕様
・フレーム等
860GTSのフレーム番号及びシーケンスは、860GT(E)と同じである。
860GT(E)と860GTSのフレームは、本質的には同じものであるが、860GTSではリア・サブ・フレーム後端の「跳ね上がり」が除かれている。
860GTSは860GT(E)と異なり、リーディング・アクスル方式のマルゾッキ製フォークを持つ、71〜73年式の750GTと同じクロム・メッキされたワイヤー・ヘッド・ランプ・サポートが取り付けられていた。
このワイヤー・サポートには、ターン・シグナル・インジケータが装着されるとともに、リアもこれと同様のクロム・メッキされたワイヤー・ブラケットによりターン・シグナル・インジケータが取り付けられている。
860GT(E)からの変更点は、280mmブレンボ製フロント・ダブル・ディスク・ブレーキが標準装備されたこと、ハンドルが低く、フラットなものとなったこと、インストルメントのレイアウトが変更されたこと及び新しいデザインのタンクとシートが装着されたことである。
フロント・ブレーキのマスター・シリンダーは、860GT(E)と同様のものであるが、クリアのフルード・リザーバーを持っている。
タンクは新しい形状となったが、容量は18Lのままであるとともに、860GT(E)と同じく、タンク・キャップの後方に、初期型のイエローの「Made in Italy」デカールが貼られていた。
860GT(E)と同じように、860GTSのシートも左側にヒンジがあり、キー・ロックで開閉できるようになっていたが、このロックは、ステアリング・ロックと同じくネイマン製である(しかし、異なるキーを使用している)。
シートの両側面には、クロム製のストライプが入れられるとともに、タンデム・グリップ・ストライプが使いやすいものに変更されており、シート左側には、クロム製のハンド・レールが取り付けられていた。
低く、フラットなハンドルは、欧州仕様の750GTと同じものである。
チョークはハンドル・マウントではなく、ホワイトのプラスチック製レバーがメタル製のインストルメント・ブラケットに取り付けられるとともに、860GTSでは新しいクラッチ・レバー・ブラケットが使用されていた。
・エンジン等
860GTSのエンジン番号も、フレーム番号と同じく860GT(E)と同じエンジン番号シーケンスが使用されており、全てがエレクトリック・スタート・モデルである。
860GTS以前のモデルに採用されていたギア・ボックスは、耐久性が低く、750ccモデル及び初期型の860GT(E)等で問題を発生させていたため、860GTSのギア・ボックスは、同じ年式の860GT(E)と同様、新しい22歯のレイ・シャフト及び5速ギアを持っている。
全ての860GTSは、15歯のカウンター・シャフト・スプロケット及び38歯のリア・スプロケットを持っているとともに、新しいベアリングを使用したクラッチ・ドラムが取り付けられている。
シリンダー・ヘッドは小変更が行われ、新しいインレット及びエキゾースト・バルブ、バルブ・ガイドが装着され、オーバー・サイズのバルブ・ガイドも用意されていた。
エキゾースト・ヘッダー・パイプの「青み(焼け)」を低減するため、860GTSでは2重構造のエキゾースト・パイプが採用されている。
これによりエキゾースト・パイプの内径は狭くなり、このため、エンジンの出力を僅かに低下させている。
・電装等
エレクトリック・スタート・モーター及びギアリングは、同年式の860GTEと同じものが取り付けられている。
このモーターはマレリ製MT65/B−08/12Sであり、15歯のスプロケットを使用しているほか、40リンクのスターティング・チェーンを必要とした。
全ての860GTSは、エレクトリック・スタートが装着されているため、大容量のユアサ製B65 12V−36Ahバッテリーのみが指定されている。
860GT(E)からの最も大きな変更点は、インストルメント・パネルである。
スミス製の2つのメーターが、750Sと同じプラスチック製のポッドに入れられ、同じくスクリュー付きのメタル製バンドで固定されていた。
860GT(E)で使用されていたプラスチック製のダッシュ・ボードは、5つの小さなワーニング・ライトを持つハンドル・マウント・ブラケットとなった。
シティー/カントリー・ホーン・スイッチ及びシングルのベッリ製2ボリューム・ホーンは引き続き採用され、オン・オフ・パーキングの3ポジション・イグニッション・スイッチは、タンク下からメーターの間に移動されている。
750ccモデルから採用されていたスモール・バルブのワーニング・ランプは、長寿命化及び消費電力の低下を狙い、860GTSでは小さなLEDランプに変更されている。
LEDはライト(グリーン)、ハイ・ビーム(レッド)、ジェネレータ(レッド)、ニュートラル(イエロー)及びターン(イエロー)であった。
スタート・スイッチが焼き切れる問題に対処するため、860GTSのスターター・リレーには、対策パーツが適用されている。
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| ・主要諸元・ |
| フレーム形式 | DM860S 851345〜853231付近 |
| エンジン形式 | DM860 851345〜853231付近 |
| ボア×ストローク | 86×74.4mm |
| 総排気量 | 864cc |
| 圧縮比 | 9.0:1 |
| 最大出力 | 57PS/7200rpm |
| タイヤサイズ |
前輪 | 3.50H18 |
| 後輪 | 120/90H18 |
| ブレーキ |
フロント | 280mmダブルディスク |
| リア | 200mmドラム |
| ホイールベース | 1519mm |
| シート高 | 779mm |
| 全長 | 2220mm |
| 全幅 | 737mm |
| 重量 | 217kg |
| ギア比 |
一次 | 32/70 |
| 二次 | 15/38 |
| タンク容量 | 18L |
| キャブレター | デロルトPHF32AD/AS |
| 総製造台数 | 570 |
75年式
・フレーム等
この年式の860GTSは、欧州仕様のみであったため、サイド・スタンドは取り付けられていない。
ブラックにペイントされたトリプル・クランプ、ポリッシュされたアルミのフォーク・レグを持つセリアーニ製フォーク及びブラックのカバーを持つ320mmマルゾッキ製リア・サスペンションは、860GT(E)と同じものである。
860GT(E)及び後の年式の860GTSとは異なり、タンク及びサイドカバーはプラスチック製バッジではなく、デカールとなっている。
サイド・カバーは860GT(E)と同様であり、またフロントとリアのマッド・ガードもペイントされたスチール製であったが、タンク上部に入れられたストライプに合わせ、フロント・マッド・ガードにはストライプが入れられていた。
・エンジン等
共通仕様に同じ。
・電装等
860GTSの製造は、75年5月20日以降であったため、この時点において行われた860GT(E)のイグニッション及び電装系等の改良が全て反映されている。
75年式860GTSには、英国向けに150mphフル・スケールのスピード・メーターが取り付けられていた。
この年式の860GTSは、860GT(E)の欧州仕様と同じヘッド・ライト(ブラックのヘッド・ライト・シェル、アプリリア製JODデュプロ55/60Wハロゲン・ヘッド・ランプ、3Wのパーキング・ライト)及びテール・ランプ(CEV製5/21Wテール・ランプ)を使用しているほか、ハーネス及びその他のリレーもヘッド・ライト・シェル内に位置している。
米国市場向けの900GTSの製造に伴い、75年9月以降、エレクトリック・スターター・リレーがボッシュ製の小さいリレーに変更された。
この変更に伴い、ハーネスにもマルチ・プラグ・コネクターが採用されたほか、ヘッド・ライト・シェル及び内部のハーネスは、1つの「コンプリート・ユニット」として取り扱われている。
アプリリア製のターン・インジケータは、ラウンド型の21Wタイプであった。
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| ・主要諸元・ |
| フレーム形式 | DM860S 853232付近〜854770付近 |
| エンジン形式 | DM860 853232付近〜854770付近 |
| ボア×ストローク | 86×74.4mm |
| 総排気量 | 864cc |
| 圧縮比 | 9.0:1 |
| 最大出力 | 57PS/7200rpm |
| タイヤサイズ |
前輪 | 3.50H18 |
| 後輪 | 120/90H18 |
| ブレーキ |
フロント | 280mmダブルディスク |
| リア | 200mmドラム |
| ホイールベース | 1519mm |
| シート高 | 779mm |
| 全長 | 2220mm |
| 全幅 | 737mm |
| 重量 | 217kg |
| ギア比 |
一次 | 32/70 |
| 二次 | 15/38 |
| タンク容量 | 18L |
| キャブレター | デロルトPHF32AD/AS |
| 総製造台数 | 968 |
76〜77年式
・フレーム等
860GTSは、76年から米国仕様が追加されている。
76年式の860GTSの製造台数は510台、77年式は458台である。
76〜77年式860GTSは、前年式から大きな変更はなく、小規模の変更に留まる。
最も大きな変更は、エンジン番号「853669」以降、セリアーニ製のフロント・フォークに代わり、フォーク・チューブが僅かに短く(38×600mm)なったマルゾッキ製のフロント・フォークが採用されたことであり、このフォークは、セントラル・アクスル方式のマルゾッキ製フォークを採用した74年式750GTと同じような、オフセットしたトリプル・クランプを持っていた。
セリアーニ製フォークと同様に、フォーク・レグはポリッシュされたアルミ製であり、トリプル・クランプはブラックにペイントされていた。
マルゾッキ製フォークは、セリアーニ製フォークとキャリパー・マウントが少し異なっているので、前年式とは異なるブレンボ製08キャリパーが採用されている。
セリアーニ用とマルゾッキ用ブレーキ・キャリパーはパーツ番号が異なり、互換性もない。
全てのマルゾッキ製フォークには、左のフォーク・レグにレッド/イエローのデカールが貼られていた。
76年にはまた、新しいスイング・アームが採用され、750ccモデルから使用され続けていた「規格外」の6mmオイル・ニップルは、M10×1mmの大きなグリス・ニップルに変更された。
この変更は歓迎されたが、両方のスイング・アーム・ブッシュにグリスが行き渡らない問題は解消されなかった。
マルゾッキ製フォークの採用に伴い、ペイントされたスチール製のマッド・ガードは、ステンレス・スチール製のものに変更された。
これらのマッド・ガードの形状は同じであり、互換性がある。
タンク及びサイド・カバーのデカールも、プラスチック製のバッジに変更されたが、サイド・カバーは「860」バッジの下に、前年式と同じ「GTS」デカールが貼られていた。
・エンジン等
76年までに行われた860GT(E)のエンジン仕様の変更は、全て860GTSに反映されている。
76年式及び77年式860GTSは、ほとんど違いがないが、76年式までのデロルトPHF32キャブレターに取り付けられていたメタル製燃料パイプ・バンジョーのフィッティングが、77年式ではクリアのプラスチック製のものに変更されるとともに、エア・クリーナーのホースがプラスチック製の「硬い」タイプに変更された点が異なる。
・電装等
米国仕様の860GTSには、シールド・ビーム・ライトが使用されるとともに、パーキング・ライトは取り除かれていた。
また、アプリリア製のリフレクターが取り付けられている点も、他モデルの米国仕様と同様である。
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